査定させて頂いたのは「本当にレイドなのだろうか?」と思わせるほどメーカーオリジナルの面影がなかった改造車。
廃車証(軽自動車届出済証返納証明書)に記載のフレームナンバーを見て、ああ本当に1995年モデルのTT250R Raidなんだと確認できました。
たしかにエンジンやスイングアームなどはレイドですが、至る所に錆び腐食が非常に目立つ車両です。
いったいいくらの査定額になるのか?
早速査定していきましょう。
外装とマイナスとなった改造内容
先ずは外装と改造内容を査定していきましょう。
1995年モデルのTT250R Raid
本来のカラーリングはパープリッシュホワイトソリッド(PURPLISH WHITE SOLID)で、紫の背景に黄オレンジ色のロゴあり、青のシートやフォークブーツがアクセントとなっているのですが。
査定させて頂いているレイドは、全て黒に塗り直されています。
タンクは形状が違い(車種判定を難しくした理由の1つ)内側も外側も劣化の目立つ他車種のタンクを置いていますが、取付ボルトは欠品で、フレームの上に置いてあるだけの状態です。
中身は錆びだらけで外見も悪く価値は殆ど計上できません。
レイド本来のマフラーを覆う幅広のシートカウルと、モトクロス車特有のシートは欠品で、自作?のように見受けられる価値を見いだせないシートカウルとペラペラのシートが付いています。
タンク・シート・カウルが純正品と異なり、トラッカー仕様のタイヤを履き、車体のカラーリングも変更されているため、見た目での車種判定の難易度が高くなっています。
部品価値的にも、機能的にも、トラッカー志向ですが纏まりきれていないスタイリング的にも、施された改造内容は残念ながら買取価値を下げる査定結果となっていました。<
更に、欠品しているパーツは、先ずメーター。そしてフォークブーツ、チェーンケース、ナックルガード、リアフェンダー、プレートステー、リアキャリア、マフラーカバーなど。
社外品は、Fフェンダー、ハンドル、ヘットライト、ウインカー、シート、テールランプ、スプロケット、シートカウル、マフラー、サイレンサーなどですが、純正品は欠品で廉価版の社外品である上に 全ての部品が劣化で価値を殆ど失っている状態の為、カスタム内容についても買取でプラスになることはなく残念ながらマイナスとなってしましました。
ボルト類は錆びで固着し、クランクケースやシリンダーヘッドは黴で覆われ、長らく放置されていた事が伝わるエンジン。見た目からも実働化させるコストが高くなりそうな予感を抱かせます。
他車種の内部が錆びだらけのタンクにはガソリンが入っておらず、キャブレターは流れていたガソリンが固着。
始動しないことは予想できましたが、念のため鍵をさしてオンにしますが、電源が点きません。
電装系を辿ると、フロント部分のハーネスが損傷しています。
実働化するには、電装系の修理、キャブのオーバーホール、タンク内の錆び取りと防腐処理、プラグ・バッテリー交換は最低限必要でしょう。
更に再販をするのであれば、固着して取り外し困難なボルト類を含め見た目の改善もマストとなります。
車両の状態から、そこまで追いかけると修復コストが回収できませんので、商業的には電装系とエンジン単体に買取価値は付きませんでした。
足回り
劣化を極めたブレーキフルードの腐食、ハンドルの錆び
錆びだらけのスポーク、オフ車としての伸縮性を失ったリアショック、査定当初は錆びでスプロケと固着していたチェーン、大きくひび割れたタイヤ、腐食と黴で覆われたアンダーダーブラケット、 錆び錆びのディすくローターやキャリパーなどは査定価格を計上するには至りませんでした。パーツとして買取価値がありそうなのはブーツは欠品していますがフロントフォークくらいでしょうか。
フレーム回り
商業的にはエンジンに買取価値がなく、外装も足回りも全滅に近い査定内容となっているここまでのTT250R Raid
残された希望はフレーム。ですが錆びが非常に目立ちます。一部では剛性の担保が危ぶまれるような錆びで脆くなっているように見受けられる箇所もあります。
アジア向けでは溶接などで再利用可能ですが、国内向けでは剛性の問題で再利用は少し厳しいのではとも思える状態ですが、スイングアームは劣化少なめでパーツ価値はあり。
貿易では値段が付くでしょうが、国内向けでは少々難しいかもしれません。
フレーム周辺のペダル・スタンド・ステップなどは劣化が激しくパーツ価値も殆ど見いだせない状態となっていました。
不動車としての総合評価と買取価格
出所不明の部品や他車種のパーツを多用し、欠品も多く車種不明ともいえる改造内容となっていたTT250Rレイド。
錆びや腐食の劣化が激しく、価値の多くを喪失していたエンジンやフレームをはじめとした各種パーツ。
TT250Rレイドとしての再生コストを考えると、再販価値を上回りそうなため、国内流通では商業的にはレストア不能の判定に。
再利用可能な部品も少なく1つ1つ見積もっても無料引取りか?それとも数千円に届くかかどうか。
ただし、海外向けとしてはパーツの出所はさておき、日本のオフ車として準完品ではあります。
ローカルモデルの250ccクラスのオフロード車が無いアジアや南米向けにはレストアベースのポテンシャルを保持しています。
毎月何十台も売っている弊社は、貿易業者にとって大口顧客です。より競争価格での取引が可能です。弊社販路の強みを活かして1万円の査定額をご提示させて頂きました。
お客様のご感想と買取後記
「部品取り車のレイドを仕入れて、TWっぽくしようと思っていたんだけど、部品もなくなったりしてそのまんま朽ちるに任せる状態に。」とはオーナー様のお言葉。
「処分引取りでお願いしていたんで、買取の値段が付くなら文句ないでしょ」と査定額にご快諾頂き買取となりました。
レイドという固定観念があったので、連想できませんでしたが、方向性はトラッカースタイルで、イメージはオーナー様のご指摘通りTWですね。
お値段をお付けする事ができて喜んで頂けましたので査定士としても充足感を感じる事ができました。ご売却ありがとうございました。
TT250R RAID 査定相場の比較
TT250Rレイドに先行して1993年に発売されたTT250Rの当時の新車価格は46.9万円~でした。
2018年現在、中古車の平均本体価格は、TT250Rが30万円台前半、TT250R RAIDが30万円弱で販売されています。
中古の店頭価格はすぐ分かるのですが、買取相場はなかなか分かりません。
いったいいくらで売れるのでしょうか?
日本の中古バイクの(買取と販売の)相場を決定している業者間オークション市場の取引データを使用して、TT250Rレイドの買取相場をご紹介差し上げます。
状態別の買取相場
- ▼状態を表す評価点の目安|TT250R RAID
- 評価点5 とても状態が良く綺麗
- 評価点4 年式並み・やや状態が良く綺麗
- 評価点3 年式並み未満で難有り
- 評価点2 実働車だが劣悪
- 評価点1 事故車や不動車
TT250R RAID|評価点別の査定相場比較 |
状態/ 落札価格帯 |
評価点 5 |
評価点 4 |
評価点 3 |
評価点 1 |
25~29万円 |
2台 |
0台 |
0台 |
0台 |
20~24万円 |
2台 |
4台 |
0台 |
0台 |
15~19万円 |
0台 |
15台 |
5台 |
1台 |
10~14万円 |
0台 |
22台 |
6台 |
4台 |
5~9万円 |
0台 |
1台 |
4台 |
9台 |
(2018年2月時点で、業者間市場の落札データを過去1年間遡った数字)
(業者間市場とは全国で買取されたバイクの9割以上が出品される市場で、販売店と買取店の会員企業間で取引されるの業者間のオークション市場。そこで落札された金額が買取業者の査定価格の基準値となっています)
極上車は20万円台。実働車の平均的な買取相場は10万円台前半
過去1年間で、61台の取引があったTT250R RAIDの実働車。
最高価格の29万円で取引されたのは、走行3,766kmで1995年式としては極上車と呼べる車両です。
20万円台で落札されている車両の大半は走行距離数千キロの極上車か準極上車で占めらています。
お客様が売ろうとしているレイドが走行の少ないかなり良い状態であれば20万円台で取引される可能性の高い相場となっています。
10万円台で落札されている車両は48台。約8割の車両が10万円台で取引されています。
したがいまして、年式並みのTT250R RAIDであれば、10万円台での取引される相場となっています。
事実、全61台の平均取引額は15.4万円となっています。
年式並みでの状態が良い方であれば、10万円台の後半、やや悪い方になれば10万円台の前半での取引となるでしょう。
下位の方に目を向けると、5台が5~9万円台のレンジで取引されています。
いずれの車両も走行距離が多い傾向(5台中4台は4万キロ以上)にあり、劣化・若しくは損傷や不調が目立ちます。
状態に難があれば5~9万円台での取引となるでしょう。
上記の金額は、いずれも業者間市場の取引金額で、買取相場ではありません。
業者間市場の取引金額とは、販売業者の仕入れ値であり、買取業者の売却額です。
市場の取引額から、買取相場を計算するには、買取業者の儲けと経費(出品手数料や運送費)を差引く必要があります。
お客様によって適正で競争的な、儲けと経費の合計は250ccの場合3万円程度でしょう。
従いまして、上記の取引額から3万円程度を差引いた額が競争力のある買取相場となり下記が状態別の目安金額となります。
- ▼買取相場の目安|TT250R RAID実働車
- 評価点5は、18~28万円
- 評価点4+は、10万円台前半~後半
- 評価点4-は、10万円弱~前半
- 評価点3は、3~10万円弱
不動車の平均買取相場は7万円程度
今回買取り致しましたTT250R RAIDと同じ、非実働状態にある不動車・事故車を表す評価点1の車両は、過去1年間に14台が取引されています。
最高額の17.1万円で取引されたのは、見た目は綺麗な不動車で、おそらくキャブ洗浄など簡単な修復で実働化すると思われる車両です。
10万円台で取引されている4台は、見た目は比較的綺麗で、比較的簡単な修復で実働化できると思われる不動車となっています。
最低額の6.2万円で取引されていたのは、鍵無でフロントフォークが歪んでいる事故車です、欠品や他の部分の損傷はなく、みための劣化は少なめです。
10万円未満で取引されているのは、最低額の事故車を除くと全て不動車で、やや劣化が目立つものの欠品や再利用不可能な部品などが無い完品のTT250Rレイドです。
10万円台で取引されている不動車に比べると、若干みための劣化が多く、実働家への修復コストも高く見積もれれている車両が多いようです。
状態が悪くても値段が付くのはオフロード車/モトクロス車の特徴です。なぜ、オフ車は事故車や不動車でも一定以上の金額が付くのか?
古い車両でも中古相場も堅調で、丈夫な車両ということもあり、修復しても国内で流通に乗せられる可能性が高いのが理由の其の1。
アジアや南米などの現地でローカルモデルが無く、古くても欧州車か日本車のオフ車の価値が高く貿易需要が高いのが理由その2です。
はなしを本筋の買取相場に戻して、
実働車の買取相場で先述した、業者間市場での取引価格から買取相場を求める式(取引額から業者の儲けと経費を差引く)を当てはめると、下記の買取相場となります。
- ▼買取相場の目安|TT250R RAID不動車・事故車
- ポテンシャルの高い不動車:8~16万円
- ポテンシャルの低い不動車:4~8万円
- レストアベースの事故車:数万円
- 部品取り用途(事故車):数千円~
年式モデル別の買取相場
2018年時点で、中古車の販売価格では数万円ですがレイドより高いTT250R。
買取相場はどうなおでしょうか?年式モデル別に比較したのが下記表です。
▼年式モデルの変遷|国内向けTT250R/レイド
- ▼TT250R
- 1993年 フレーム番号4GY-00~(4GY1)
- 1994年 フレーム番号4GY-02~(4GY3)
- 1995年 フレーム番号4GY-04~(4MR2)
- 1996年 フレーム番号4GY-06~(4MR2)
- 1997年 フレーム番号4GY-08~(4RR2)
- ▼TT250Rレイド
- 1994年 フレーム番号4GY-02~(4GY3)
- 1995年 フレーム番号4GY-06~(4GY5)
- 1996年 フレーム番号4GY-08~(4WA1)
※上記年式とフレーム番号は推測です(正確ではありません)
年式別の相場|TT250R/Rレイド実働車 |
相場/ 年式モデル |
平均落札額 |
最高額 |
取引台数 |
TT250R 1993年 |
15.7万円 |
23.4万円 |
46台 |
TT250R 1995年 |
13.9万円 |
19.8万円 |
7台 |
TT250R 1997年 |
15.7万円 |
22.4万円 |
8台 |
レイド 1994年 |
15.3万円 |
26.8万円 |
28台 |
レイド 1995年 |
16.6万円 |
29万円 |
12台 |
レイド 1996年 |
14.8万円 |
23.6万円 |
21台 |
中古車の平均販売価格は、レイドより3万円程高いTT250Rですが、前提となる業者間市場での取引価格では差が無いので、TT250Rとレイドの買取相場に差はありません。
国内向けでは、1993~1997年まで5つの年式モデルが存在するTT250R。1994~1996年まで3つの年式モデルが存在するTT250R Raid。
どちらも外装などのマイナーチェンジにとどまっていることもあって、年式による買取額の差はありません。車両の状態が純粋に査定額に連動する車種といえます。
TT250R レイド【1994~95年式の4DY型+1996年式の4WA】
【実働車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 61台
- 平均価格: 154,082円
- 最高価格: 290,000円
- 最低価格: 52,000円
【事故車・不動車】の業者間オークション市場における、買取時点直近12ヶ月間の落札データ
- 取引台数: 14台
- 平均価格: 98,286円
- 最高価格: 171,000円
- 最低価格: 62,000円
相場情報:2018年2月12日時点
最新の相場情報は、10秒で買取相場が出る自動査定でチェックして頂けます。
上記金額は、買取業者の最大の転売先である業者間オークション市場の落札データであり、買取業者の転売金額です。
業者間オークション市場とは買取業者と販売業者が参画する競り市場で、年間に約20万台のオートバイが取引される市場です。
買取業者が買取したバイクの約9割は上記市場において転売されています。
その事実が、業者間オークション市場の落札金額が買取業者の査定額の基準値である所以です。
査定現場での買取価格は下記の転売(落札)金額から買取業者の儲けと経費(運送料や出品手数料など)を差し引いた金額となります。
査定現場での正味の買取額は、転売金額である落札額から5~10%を割り引いた金額が適正で競争力のある価格となります。
金額にすると単価の安い原付バイクで1万円から、100万円を超える高額車両では6万円までが適正な割引額です。